私の研究では、極低温まで冷やすと電気抵抗が生じる「超伝導」がどのような新奇な・エキゾチックな現象を引き起こすのかを理論的に調べています。中でも、バルクではトポロジカル数を持つために表面・エッジにおいて局在した状態を持つ「トポロジカル超伝導」や超伝導体と常伝導体、超伝導体同士をくっつけた「超伝導接合」における表面・界面の状態や輸送現象に着目をしています(図1)。

図1: 研究対象のイメージ。マイスナー効果の図の引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/超伝導

図1: 研究対象のイメージ。マイスナー効果の図の引用:https://ja.wikipedia.org/wiki/超伝導

超伝導の理論では、単体金属や銅酸化物超伝導体のように、電子の持つスピンの自由度のみ(1軌道模型)で基本原理が理解されています。しかし、Sr2RuO4超伝導体[1]のように、電子の軌道の自由度のような「系の持つ内在的な自由度」を考慮する必要のある超伝導体も存在し、この内在的な自由度によって既存の1軌道模型では説明できない新奇な・エキゾチックな現象が発現します。また、超伝導におけるトポロジカル超伝導や超伝導スピントロニクスなどの特異な現象は強磁性などの「磁性」によって発現・制御できる一方で、超伝導は強磁性によって壊れる(対破壊効果)という潜在的な問題を抱えています。この問題を解決すると考えられているのが、近年の理論・実験研究から発見された「交替磁性」や「p波磁性」という新しい磁性(非従来型磁性)[2]です(図2)。この非従来型磁性は巨視的な磁化がないため、強磁性に比べて超伝導を壊しにくいと考えられています。よって、この新しい磁性と超伝導を組み合わせることで、強磁性との組み合わせで知られていた現象に加えて、新奇な現象が実現する可能性があります[3]。

図2: 強磁性および新しい磁性であるd波交替磁性およびp波磁性のFermi面(スピン分裂)のイメージ[2]。

図2: 強磁性および新しい磁性であるd波交替磁性およびp波磁性のFermi面(スピン分裂)のイメージ[2]。

以上より、私の研究テーマは、電子の軌道の自由度などの内在的な自由度や非従来型磁性によって発現する超伝導における量子現象を調べることで、新奇な・エキゾチックな量子物性を理論構築することとなっています(図3)。

図3: 研究テーマのイメージ。

図3: 研究テーマのイメージ。

[1] Y. Maeno, et al., Nature(London) 372, 532 (1994).

[2] M. Naka, et al., Nat. Commun. 10, 4305 (2019), S. Hayami, et al., J. Phy. Soc. Jpn. 88, 123702 (2019), L. Šmejkal, et al., Phys. Rev. X 12, 031042 (2022), etc.

[3] Y. Fukaya, B. Lu, K. Yada, Y. Tanaka, J. Cayao, J. Phys.: Condens. Matter 37, 313003 (2025).

研究手法

私の研究では、Fortran90を使ったプログラミングによる数値計算を中心として行なっています。計算する模型は強束縛模型を中心としていますが、連続体模型も取り扱うこともあります。強束縛模型においてグリーン関数を数値的に計算し、表面・界面の状態や超伝導接合で生じる輸送現象を調べています。

以下では、これまでの私の主な研究成果について紹介します。

ハニカム格子系における超伝導発現機構

超伝導へ相転移した際にどのような超伝導状態となりうるか、調べることを「超伝導発現機構」と言います。超伝導は電子間の相互作用によって引き起こされる多体問題となっており、この多体問題をどのように解くべきかが重要となります。

私の研究では、グラフェンに代表される、ハニカム格子という正6角形構造をした格子において、電子間のクーロン斥力によって発現する超伝導状態を乱雑位相近似(Random Phase Approximation, RPA)の範囲内で調べました[4]。このハニカム格子系は副格子という電子のスピン以外の系の内在的な自由度(図4)を持つため、副格子の自由度を考慮した模型を使った計算を行う必要があります。加えて、スピン軌道相互作用をハニカム格子系(Kane-Mele模型[5])に導入することで、スピン軌道相互作用も考慮した超伝導発現機構を調べることができます。スピン軌道相互作用が小さい場合、スピン揺らぎによって異なる副格子間のスピン1重項d波状態が安定化します。しかし、スピン軌道相互作用が大きなると、スピン1重項状態を安定化させるスピン揺らぎが抑制されるため、同じ副格子内のスピン3重項f波状態が異なる副格子間のスピン1重項d波より安定化するようになります。

図4: ハニカム格子系のイメージ。赤色の丸は副格子A、青色の丸は副格子Bを表す。

図4: ハニカム格子系のイメージ。赤色の丸は副格子A、青色の丸は副格子Bを表す。

[4] Y. Fukaya, K. Yada, A. Hattori, Y. Tanaka, J. Phys. Soc. Jpn. 85, 104704 (2016).

[5] C. L. Kane and E. J. Mele, Phys. Rev. Lett. 95, 146802 (2005).